接着剤の糸引きが止まらないときに、私が順番に確認していること


生産技術の仕事を20年ほど続けている森島陽平と申します。
前職は電子部品メーカーの生産技術部で、基板への接着剤塗布とポッティング工程を14年担当していました。
今は独立して、中小の製造業さんの塗布工程の立ち上げや不良対策をお手伝いしています。

現場に呼ばれる理由でいちばん多いのが、接着剤の糸引きです。
塗り終わってノズルが上がるときに細い糸が伸び、隣の部品にぽとりと落ちる。
昨日は出なかったのに、今日の昼から急に出はじめる。

糸引きは装置の故障で起きることがほとんどありません。
たいていはどこかの条件がずれているだけです。
私が現場で確認している順番を、そのまま書いておきます。

はじめにノズル先端の汚れを落とす

設定画面を開く前に、ノズルの先端を見てください。
前の吐出で残った液が先端の外側にまとわりついていると、そこを起点にして糸が伸びます。
半日連続で流したラインだと、これだけで再現します。

清掃はシフトの切り替わりごと、材料を替えたときは必ず。
「昨日は出なかったのに」という症状は、けっこうな割合でここで消えます。

ノズル内径と液の粘度が釣り合っているかを見る

原因として最も多いのがこれです。
内径が液の粘度に対して太すぎると、吐出を止めたあともノズル内に残った液が自重で垂れてきます。
ディスペンサメーカーのナカリキッドコントロールも、液だれの原因として「ノズルのパイプが太すぎること」を挙げています。

では細ければいいかというと、そうでもありません。
粘度の高い液に細すぎるノズルを使うと詰まりやすくなり、残った圧力で液が押し出されて結局垂れます。

私が現場で試す手順はこうです。

  • 今使っているノズルのゲージと液の粘度を控えておく
  • 1〜2ゲージ細いものに替えて、同じ条件で20ショットほど打つ
  • 塗布量が落ちた分は吐出時間か圧力で戻す
  • 詰まる気配が出たらひとつ戻す

ノズルは消耗品です。
先端がわずかに摩耗したり曲がったりするだけで、液の切れ方は変わります。
曲げノズルが要るときに自分で曲げるのは詰まりのもとなので、メーカーに作ってもらってください。

液温が工程の途中で変わっていないかを見る

粘度は温度で動きます。
温度が上がれば粘度は下がる。
タンクに入れたときとノズルから出るときで液温が違えば、狙った粘度で吐出できていません。

朝と昼で症状が変わるときは、まずここを疑います。
タンクやホース、バルブにヒーターを付けて温度を保つ方法があり、既設の装置に後付けできる場合もあります。

液の中の気泡も同時に確認しておきたいところです。
溶存ガスや詰め替え時に噛み込んだエアがあると、吐出が一瞬途切れて量がばらつきます。

吸い戻し(サックバック)と動作条件を調整する

ここまでで直らなければ装置側の設定です。
吐出が終わった瞬間にノズル内の液をわずかに引き戻す、サックバックという機能があります。
ポンプのロータを逆転させて液を吸い戻し、先端の液切れを良くする仕組みで、糸引きやノズルへの這い上がりに効きます。

ただし引きすぎは禁物です。
負圧が強いと先端からエアを吸い込み、今度は気泡による吐出ばらつきが出ます。
少しずつ上げて、効きはじめたところで止めてください。

ノズルの引き上げ高さと速度、吐出後に一拍待つディレイも、変えると結果が動きます。

それでも直らないなら、吐出方式そのものを疑う

条件を振り切っても糸を引くなら、その液に対して吐出方式が合っていない可能性があります。

エア圧で押し出す方式は扱いやすい半面、粘度の変化がそのまま吐出量に響きます。
ピストンの体積で計量する容積計量方式なら、粘度が多少変わっても量がぶれにくくなります。
液滴を飛ばすジェット方式であれば、ノズルがワークに触れないので糸を引く条件そのものが減ります。

方式ごとの違いについては、ディスペンサーという装置の吐出方法を整理したページにまとまっています。
次の設備を検討する前に目を通しておくと、メーカーとの打ち合わせが早く済みます。

そもそも接着剤が被着体に広がるかどうかは濡れ性、つまり界面の性質の話です。
このあたりを腰を据えて学びたい方には、産業技術総合研究所の接着・界面現象研究ラボの研究テーマが参考になります。
現場でよく飛び交う「チクソトロピー」のような用語も、JIS K 6800(接着剤・接着用語)で定義されています。

確認の順番と、かかる手間

順番確認すること手間
1ノズル先端の汚れ・液残りその場で数分
2ノズル内径と粘度の釣り合い交換とトライで半日
3液温と気泡測定・脱泡で1日
4サックバックと動作条件条件出しで1〜2日
5吐出方式の見直し選定・テストで数週間

上から順に手戻りが少なくなっています。
いきなり装置更新の話から入って、実はノズル1本で済んだ、という現場を何度も見てきました。

まとめ

糸引きの原因は、ノズル、液の状態、装置の設定、方式の4層に分かれます。
先端の汚れという数分で終わる話から順に潰していけば、多くの場合は途中で止まります。

大事なのは、1つ変えたら1つ記録することです。
条件をまとめて動かすと、何が効いたのか永久に分からなくなります。
地味ですが、この積み重ねが翌年の立ち上げをずいぶん楽にしてくれます。